⑥成長
H.K.
英語力は間違いなく上がった。リスニング能力に関して言うと、ニュースなどの声が聞き取れるようになったし、街でとっさに話しかけられても聞き取れるようになった。最初は、スタディーラウンジや図書館で勉強している時に他の学生が英語で大きな声で話していても、聞き取れないから全く気にならなかったけれど、だんだん聞き取れるようになってきて気になって集中できないくらいになった(笑)スピーキングに関しても、自分から積極的に話しかけるようにしたし、何を質問されても” I don’t know”だけで終わらせないようにして、英語をできるだけたくさん話すよう努力した。
最初は、発音がネイティブ学生とは違うから、話しても伝わらなくて悔しい思いをしたし、言いたいことがあっても面倒だからと諦めたこともあった。けれど発音が良い悪いにかかわらず、とにかく伝えようとしてみることで伝わるようになってきた。そのあとで、だんだん発音もよくなってきた。「伝わりやすい言葉を選んで話す」、「伝わらなくてもとにかく自分から言ってみる」ことの大切さを学んだ
もともと得意だったリーディングとライティングは、大量の課題をこなしているうちに、読むのも書くのもさらに早くなった。何よりも、英語を使って自分の伝えたいことを表現できるようになった。ディスカッションの時間が多い授業を取って、嫌でも自分を表現する機会を設けたし、意見を求められていなくても自分で勝手に頭の中で英語で考えるようにしていた。
もちろん克服できなかったこともあった。人によって英語が聞き取れなかったり、話していることが伝わらなかったり、みんなそれぞれ話し方に癖があるし、母国語が英語ではない人の英語は聞き取りにくくて苦労した。
英語力以外にも、半年間自分の目標を見失わずに走り続けてこれたことは自信になった。沢山のテスト、レポート、プレゼンテーションの課題に追われながら、勉強に関しては妥協しなかった。私にとって今まで一番勉強した経験は大学受験だけど、受験勉強を始めたのが遅かったから3カ月程しか勉強していないし、半年間ぶれずにコツコツ勉強し続けたのは初めてかもしれない。
とにかくネイティブ学生に負けたくなくて、土日以外は朝早く学校行って授業の後も残って勉強して夜帰っても勉強して、課題が多かったのと付いていくのに必死だったのもあるけれど、留学生だからこそテストもネイティブに負けたくなくてコツコツ勉強した。そして、コミュニケーション専攻だから仕方ないけどプレゼンが多かった。
辛かったけど、一番自分を成長させてくれた。ほぼ毎週プレゼンしてた。グループの人と仲良くなれて、「グループに恵まれてよかったね、羨ましい」って言われることもあった。確かにその通りだけど、最初は、英語下手な留学生1人でグループの仲にポツンといて憂鬱だった。
だけど「憂鬱だな」で終わらせずに、英語できないなりに私の長所を生かして、存在意義を発揮できるように沢山考えたし、ネイティブ学生の言うことやることに果敢に食い付いていったからこそ、この関係が築けたと思う。ネイティブ学生に負けたくない、留学生だから仕方ない、って思いたくないし思われたくない、その気持ちだけは自然と消えなかったし、その気持ちがあったから5カ月間頑張れたと思う。
また、自分がどれだけ何も知らないか、分かった。友達に、去年チコで起きた山火事で被災した人たちと交流するキャンプに行こうと誘われた時、自分は日本人だけど3.11のことよく知らないし、それで被災した人たちのために何もしていない。別の人に、「東京ってどんなとこ?」、「日本のいいところは?」と聞かれた時も、ありきたりなことしか言えなくて、自分の思ってる日本ってどんなものだろう、と考えるきっかけになった。
日本に20年以上も住んでいるくせに、表面的なことしか知らない気がしたし、海外に興味を持つ前に日本のことをもっと知るべきだと感じた。留学中、海外では自分が日本を代表する存在になるということも実感した。ビュートカレッジという田舎の大学を留学先として選んだからこそ、日本について全然知らない学生や、留学生とあまり関わったことのない学生が多く、私がその人にとって“初めて会う日本人”であることも多かった。その学生達と私が話すことで、日本に少しでも興味を持ってくれるかどうか、日本が嫌な国だなと思われてしまうかは、私次第なのだと思った。
私が日本のイメージを作っているし、”自分”を表しているだけじゃなくて、”日本”を代表している気がしたことが多かった。だから、日本人である私が日本に関して無知だということは恥ずかしいことだと思ったし、代表して何でも答えられるくらいになりたいと感じた。
そして、家族とこばさんの他に感謝しているのが、会社。入社書類も帰国後でいいと言ってくれて、内定式も、出れない人が悲しくならないようにオンラインにしてくれる、本当に良い会社に入ったことを実感した。留学中に私が会社のことを気にしなくていいように、と気遣ってくれて、貴重な留学期間を大切に過ごしてほしいとメールで応援してくれる会社。
挑戦を本気で邪魔しないように後押ししてくれる会社。入社した後も自分の挑戦や目標を本気で応援してくれる会社なのではないかなあと、思えて嬉しくなった。そんな、自分の会社を好きになれたことも、このタイミングで留学できてよかったと思うことだ。
この約5か月間、自分にとって価値があるって思ったことは全て積極的に挑戦したし、逆に悪影響だと思ったことからはちゃんと遠ざかりながら、一人で知らない世界に飛び込みまくった。何をしても自分の責任だから、自分の判断基準をとにかく大切にして、自分の考えることを信じて慎重に行動した。勉強するということは、授業で人から教えてもらうことだけじゃなくて、生活の中にも潜んでいるし、自分がアンテナを張れば張るほど増えるものなのだと分かった。
社会に出てもずっと大切にし続けたいことを、この5か月間で沢山学んだ。これからもお世話になるであろう家族とこばさん、挑戦を応援してくれる会社、そして電話やラインで相談に沢山乗ってくれる友達に加えて、この5カ月で学んだ沢山のことを大切にしていきたい。