海外留学って何なの?

小林 明

最近では高校でも大学でも「国際化」「海外留学」「国際教育」といった言葉が大きく取り上げられています。日本政府が主導で有志や企業に支援を呼びかけ、最終的に200億円を目標に寄付金を集め、官民協同で将来をになうグローバル人材の育成を目指しています。2020年の東京オリンピックまでに1万人の若者を育てることを目標に「官民協働海外留学支援制度 ~トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム~」が2014年からスタートしています。

グローバル人材の育成と聞くと、なにか特別な資質をもつ優秀な学生に限定して集中的にお金をつぎ込み、将来日本の官僚やグル―バル企業、国際連合など国際機関などで働くごく少数のエリートを育てようとしているように錯覚するかもしれません。国家公務員の上級職やいわゆる一流企業と呼ばれる会社に合格するような人材をイメージしている人も多いのではないでしょうか。でも、募集要項を見る限り実態は少し違っています。今までの一般的な多くの奨学金は、成績が優秀であることが選考の重要な評価項目だったのですが、「トビタテ!留学JAPAN」で募集する学生は、「座学や知識の蓄積型ではなく「実社会との接点」から多様な学びを得ることができる」実践活動を含む留学計画を支援するとなっています。それも自分自身で実践的な計画を立案し、提案することができるのです。実践活動とは、インターンシップ、フィールドワーク、ボランティア、プロジェクトベースドラーニングなどを含む多様な活動ということですから、テストの試験で満点ばかり取っているだけではないようです。

先に述べたように2014年から2020年までの約7年間で1万人の育成を目指していますから年平均約1400人となります。2016年度の支援規模は500名ですから、民間企業などからの寄付金の集まりがまだ不十分なのでしょう。年間2000名以上の支援も可能となるよう経済状況が好転することを期待しましょう。高校生の皆さんも大学に入学すれば誰でも応募資格が発生しますので、進学大学を決めるとき海外ボランティアや海外インターンシップなど多様な留学プログラムが整っていることを条件に絞ってみることも大切でしょう。このプログラムの募集要項によると2016年度は理系、複合・融合系人材コース220 名、新興国コース80 名、世界トップレベル大学等コース100 名、多様性人材コース100 名の4つのコースとなっていますから、理工系や人文社会系いずれに進学してもチャンスがあるということです。

さて、前置きが長くなってしまいました。留学がなぜ必要なのかという本題に戻ります。一つの例として、文部科学省のとりまとめた『「《留学生30万人計画》の骨子」の考え方に基づく具体的方策の検討』の中に海外留学における個人的な意義として、次のように言っています。「国際体験を通じた国際理解・知識の拡大、語学力の向上など学生の能力や可能性を広げ、留学を通じ国境を越えた幅広い人的ネットワークの形成につながる」、概念としては何となく分かったようで、具体的には何をどうすれば良いのか分からないというのが正直なところではないでしょうか。語学力の向上は何とか理解できるものの国際体験ってどんなことを言うのだろう、国際理解とは何を勉強すれば良いんだろう、国境を越えた人的ネットワークってどうやって作るんだろう、といった単純な疑問が湧いてきませんか。これらの意味が充分わかって具体的に対応できている教育機関はあまり多くないように感じます。現役学生の声を聴いてみて下さい。