コラム① 留学前後の留学の意識に関するギャップ
久米梨紗子
私たち小林ゼミナールでは、留学経験のある大学生97人に、留学前と留学後の留学に対するイメージのギャップについてアンケートを行った。まず、ギャップがあったかどうかという問いに対しては、約75%の人がYESと答えた。どのようなギャップがあったのか回答をみてみると、大きく3つに分類することができる。
1つ目は語学力について。実際に現地で会話をしてみようとすると、自分が思っていた以上に話せなかったと感じた人が非常に多かったようだ。また、留学すれば勝手に英語力はぐんぐん伸びるだろうと思っていたものの、伸び方は人それぞれであると気づいた人もいた。一方で、きちんとした英語でなくても、ジェスチャーや表情などを含めれば伝わる、文法よりも伝えようとする気持ちが重要だと体感した人も多かった。私自身も、初めのころはなかなかスムーズに言いたいことが英語で出てこなくて、会話を止めてしまうことが申し訳なく、話さずに聞いているだけでいいやと思ってしまいがちだった。しかし、やはり話さなければならない場面は出てくるもので、そのような状況を繰り返すうちに、日本語で浮かんでくる言いたいことを英語に訳すという状態から、言いたいことがそのまま英語で浮かんでくるというように変化していった。そうすると、あまり会話を止めずに自分も返答ができるようになり、会話が一気に楽しくなった。なんでも慣れが大事だなぁと思ったものである。相変わらず文法やワードチョイスが適切ではないのは重々承知だが、それでも話したい!という気持ちがあればコミュニケーションは十分に成り立つ。
2つ目は積極性について。こんなにも積極性が必要になるとは思ってもみなかった!というギャップが多々報告された。具体的には、海外に行けば目新しいものばかりだし、勝手に充実した楽しい毎日になるだろうと思っていたけど、そうではなかったという意見や、留学生は珍しがられて話しかけてもらえるんだろうなぁ、友達もいっぱいできるかなぁなんて思っていたけれど、実際にはアメリカは留学生を多く受け入れているため全く珍しくなく、自分から積極的にならないと友達すらできないことを思い知ったなどである。大変ではあるが、自身の成長につながる良いギャップといえるだろう。
3つ目は日本についてだ。留学というと外国に行き、その国について学びに行くというイメージが強い。しかし、予想に反して、日本という国、自分が日本人であることについて意識したり、考え直す機会になったという声が大きかった。というのも、外から見ることで日本の良い所、悪い所を再認識することができる。また、私の留学した地方ではそのようなことはなかったが、場所によっては日本人ということで差別を受けたという人もいる。
ギャップというものは乗り越えれば人を成長させるが、大きすぎるとやはり疲れてしまう原因にもなる。できるだけギャップを小さくするにはどうすればいいだろうか。体験談から見えてきたポイントは3つだ。1つ目は、事前に留学経験者に話をよく聞いて置くこと。心構えや持っていくと良いものなど、情報収集は大切だ。2つ目は、目標を持って留学に臨むこと。留学に行く前後で特にギャップを感じなかった人に共通して見られた意見である。人は環境の変化に左右されがちだが、留学は自ら環境を変えに行くわけである。その際によく覚悟を決め、目的や目標を明確にして、日々達成のために努力をする。そうすることで留学生活を自分でコントロールできている実感が持て、あまりギャップを大きく感じることがないようだ。3つ目は、英語はツールであると認識すること。これは非常に大切で、多くの人が感じたようだ。思っている以上に話せない、通じない!というギャップや、思うように英語力が伸びない!といったギャップを小さくするのに有効だ。あくまでも英語はコミュニケーションツール。語学力の向上にこだわりすぎず、現地の人と心を通わせるコミュニケーションを取ること、そこに重きを置くことで得られるものは大きいはずだ。
これらの情報をもとに、準備は万端に、でも恐れ過ぎずに留学へ挑戦してみよう!