語学力の向上なら生活にどっぷり浸かること

久米梨紗子

何のために留学をするのか?留学経験者にアンケートをとったところ、やはり語学力の向上という回答が1番多かった。私自身も留学しようかなーと考え出したきっかけは、もっと英語が話せるようになりたいと思ったからだった。しかし、留学目前に近づくにつれてだんだんと意識が変わり、外国の街並みや雰囲気を肌で感じたい、たくさんの人と触れ合う中で異文化感性を高めたいと思うようになった。

留学をするとなると、外国に住む以上、語学力はある程度自動的に高まる。人とのコミュニケーションは不可欠なので、コミュニケーションを取るためには英語やその国の言語をある程度話せるようになる必要があるからである。Reading やWritingは勉強しなければ大きくは伸びないし、文法も意識し続けない限りミスは減らない。しかし Listening とSpeakingに関しては、暮らしているだけで必要に迫られ伸びていく。語学力をどう捉えるかにもよるが、以前の私のように「英語が今よりも話せるようになりたい!」という人にとっては、行くだけでその目標は達成できると思われる。果たして、留学の目標を自動的に達成できるようなものに設定して良いのだろうか?せっかくお金、時間をかけて留学に行くのであれば、語学力の向上だけでなく、何か他にも目標を立てるべきではないだろうか?

留学経験者へのアンケート結果では、留学を通して身に着けたものとして異文化感性が1番票を集めた。私自身も、ホストファミリーと暮らす中でアメリカの人々の暮らしを体験することができ、理解が深まったように感じる。日本人は他国の人に比べて宗教への関心が薄いということも、頭では理解していたが、実際に毎週教会へ通ってみるというのはすごく興味深かった。また、家族と一緒に出掛けることで、アメリカは小さな子供たちに優しい社会だと気づけたというように、社会の雰囲気やあり方などを感じ取ることもできる。

寮で暮らした人たちはルームメイトがアメリカ人でないことも多く、共同生活をする中でなおさら色々な文化の違いに直面したようだった。個人的には異文化感性のほかに、積極性や自己表現力が高まったように感じる。異文化の中で暮らすということは、自分の常識が通じない時があるということに気づく。そうすると、今までの見方とは違う視点で物事を捉えられるようになる。その結果、私は自分自身の性格について、日本にいたときとはまた違った方向から深く考えることができた。そしてもっとありのままの自分を出して、自由に生きようと思い、以前よりも積極的に、のびのびと活動できるようになったと思う。

これらのことから、私は留学の目標は語学の習得ではなく、五感を使って得られるものや、自身の成長などにすることをオススメしたい。日本では得ることが難しいもの、テキストからでは得られないものを大切にしてほしい。