留学では180度違う環境や人々に触れられる

上條秀斗

 留学の目的は人それぞれであろう。そもそもの留学の目的は言語それ自体を学びたいという人が大多数のように思える。ただ私が思うに留学の意義とは異文化に触れる事で自分のこと、自分の国のこと、すべてのことを客観視できるようになることだと考える。留学を通じて言語を学び、ある程度話せるようになった人から留学の経験を聞くと、人間的に成長したという話しを聞く事が多い。それは異国、異文化の地に一人で足を踏み入れ、自分が主体的に思考、行動しなければ生きていけない環境に置かれたからだと考える。自分自身の成長を実感できるレベルに達するならば客観的に見た当人は別人のように一回りも二回りもたくましくなっているのだろう。
 当たり前という概念が通じない異国で経験したことは帰国してからも日常生活に必ず還元される。たとえば自分がモットーとしていることや、こうあるべき、こうありたいという考えに背いた性格の人間がもちろんいる。それに対してそういう人間もいるのだと割り切れるようになる寛容性や柔軟性が自然と身に付いているだろう。しかし、いくら留学して異文化に触れたとしても、その文化に否定的になり、そのまま帰国したとしたら上記の感覚は得られないであろう。つまり、何事も肯定的に受け入れることが求められる。いくら相手に対して反発したい状況や批判したい状況があったとしてもだ。ひと呼吸おいて、なにか自分に非があったのではないか、相手が正しいのではないかと考えてみる。こういう価値観を身につけるためには異文化に触れて学ぶことが必要だろう。それなら日本にいる外国人と親しくすれば?という疑問がすぐに浮かぶが、留学とは180度違う。というのも、日本にいては外国人の考えや価値観よりも当人が多数派になってしまうからだ。留学先で自分が少数派であるという状況を経験することが貴重かつ必要である。