留学先が欧米の先進国ばかりなのは言語、環境、歴史の必然

日名地祐輔

世界のグローバル化により人、モノ、金、情報、サービスなどの流通が加速度的に進行し、世界各国の国境が徐々になくなっている状況の中で、何故大学の留学先は欧米の先進国ばかりなのか。2012年度統計による日本人の海外留学者数を集計したところ、60,138人(対前年比2,637人(約5.0%)増)であり、留学者数の多い国は1位中華人民共和国(21,126人)、2位アメリカ合衆国(19,568人)、3位英国(3,633人)である(2012年OECD調査)。この結果を踏まえると、2012年時点においての留学先の1位が中国であることを考えると、この命題の前提条件が適切かどうか疑問は残るが、日本においても留学先の国々を全体的に見るとやはり欧米諸国が多いのは事実である。ではなぜこうも留学先に選ぶのが、欧米の先進国ばかりになるのか。①共通言語、②高度なインフラ環境、③歴史的経緯の三つの要素から考えたいと思う。
まず、留学する主な目的の一つとして、語学力の向上が挙げられる。もちろん語学力の向上を目指す上では、実践的に使うことができ、世界で使用されている共通言語の習得を目的とする人が多い。共通言語といえば、英語が第一に挙げられるだろう。また次点としては、フランス語もヨーロッパの国際会議でよく使用される。こうした状況において、一般的に世界で話されているAmerican English、またQueens Englishと呼ばれるイギリスに留学する人が多いのは必然的である。もちろんフランス語習得のためにフランスへ行く人もいる。様々な言語が混じり合い、訛っている発展途上国で話されている共通言語を習得するよりはネイティヴからの言語習得を目的とするのは必至であると思う。
次に高度なインフラ環境についてだが、留学先を決める材料としてやはり留学先の国がインフラ整備されているか否かは大きなポイントになると思う。インフラが整備されていない国々では衛星環境、治安等がかなり悪いと考えられており、様々な面で安全性の劣る国に留学し、勉学に努めたいとは誰も思わないだろう。もちろん、そうしたインフラ設備もままならない発展途上国等に行きたい人もいることはいるが、そうした人々は、自分の旅行先として選ぶことはあっても、基本的に旅行よりも長く滞在する留学では高度なインフラ環境を求めることが多いだろう。その点、欧米先進国は、インフラ設備は整っており、食の衛生環境、治安は整備されており、こうした側面も関係しているのではないかと思う。
最後に歴史的経緯についてだが、歴史的に現在の世界は強国である欧米の価値観が浸透し、今の時代を構築してきた。民主主義的価値観、資本主義制度など欧米の価値観が前提となって時代が進んでいる。世界を席巻した政治家、経済学者、科学者等の多くは欧米諸国から排出されており、最近でもフランスの経済学者トマ・ピケティが話題となった。若者たちは自らの夢を叶えるため、輝かしい自分の未来を切り開くためには、歴史的に世界を牽引してきた欧米諸国に身を投じるべきだと世界中の多くの人が感じているのではないかと思う。