
国際教育の観点から留学と国際理解を考える
日名地祐輔
国際教育の観点から留学と国際理解を考えてみよう。少子高齢化により人口減少が進行している日本において、若年層が少なくなってきている状況下で日本全体として、労働力が必要とされている。解決策の一つとして、移民政策という案が浮上してきているが、大量の外国人受け入れを日本で実行することができるのであろうか。また世界でも異文化による紛争が激化しており、宗教上の相違等からテロに及ぶ行為が増加してきている。こうした世界の中で国際理解を含む国際教育の重要性が一層増してきている。国際教育でいちばん古くから言われていること、国際理解を進めるには留学をすることがかなり効果的であるが、それ以外の選択肢として留学(海外に長期滞在することとする)をせずに果たして国際理解を進めることが可能であるかを考えていきたい。ここでは日本における実践を考察する。
留学で国際理解が進む要因として、一つには生活環境が大きく関係してくるのではないかと思う。実際に、異国に身を投じることで、肌感覚で異文化の生活を経験することができる。百聞は一見にしかずというが、やはりメディアなどから文字や映像で情報を手に入れて理解をするのとは比較にならないほど、国際理解が深まるだろう。
一方で、留学をせず、国内で国際理解を進めることとする。日本のような海洋国家では、陸続きの国はなく、異文化が入り乱れておらず、エキゾチックな体験は到底実践できないだろう。国際色豊かな大学であれば、海外からの留学生と触れ合っている内に国際理解が多少なりとも進むかもしれないが、あまり効果的ではないだろう。結局日本人は、日本にいる限り、お互い安心できる日本人と接してしまうことがほとんどであり、どうしようもない現実である。そもそも国際色の強い大学自体、全体的に見れば少数であるので、この実践自体難しいかもしれない。個人的には、反対だが、移民を受け入れることで、日本はより国際色が強くなり、移民政策を劇的に成功させれば、留学をせずに国際理解が進むかもしれない。当然現実的ではない話である。
以上のように様々な思考を凝らしたが、留学なしで国際理解を成功させるビジョンが全く見えない。国際理解を進めるのであれば、留学させた方が断然効率的であると思う。国際理解を留学の目的とするのではなく、まず、各々個人の理由で主体的に留学することで、国際理解は付随的に伴ってくるものだと思う。最終的に、国際教育の一端をしめる国際理解を深めることは非常に重要であり、留学するのが一番現実的かつ効率的であると考える。