戦地としてのサイパンを訪ねて
ゼミ合宿の目的は、「戦争の原因・本質への認識を深め、国際平和実現のための手立てを考える」ということでした。その導入として、一日目の夜に、全員でサイパン戦が舞台となっている映画を鑑賞し、翌日には映画の内容を踏まえて実際に戦跡を巡りました。数箇所を回るツアーとなっていましたが、サイパンを知り尽くしたガイドさんのお話が聞けて、勉強になりました。
今回巡った戦跡は、バンザイクリフ、ラストコマンドポスト、スーサイドクリフです。バンザイクリフを実際に見た時、最初は「思ったより崖が低く見える」と感じていましたが、ガイドさんのお話から、崖の下が浅瀬になっている所で最も多くの人が亡くなったと聞き、恐ろしくなりました。また「ここから何人の人が、何を思いながら飛び降りたのだろう」と思い、胸が痛みました。バンザイクリフは、米軍に投降することを拒否した民間の日本人が「万歳」などと叫びながら身を投げた地です。
ラストコマンドポストは、「最後の司令部」と訳されるものの、実際には日本軍の監視所であった岩屋で、現在はその周辺に当時の大砲や戦車が展示されています。ここでは、その外側の壁に、中国人による尖閣諸島に関する落書きがされていたのですが、個人的にはそれが一番悲しかったことでした。戦跡はかつて犯した過ちの負の遺産であり、未来の平和のために残されているものです。その戦跡が、悪い意味で現代の対立要因と繋がってしまっていることは、国際平和から程遠いと感じました。そして日本国内だけではなく海外でも、平和実現の観点から、国際教育の実践が必要であるということを再認識しました。最後のスーサイドクリフはバンザイクリフよりも崖のすぐ手前まで行けたのですが、絶壁であるのに加えて高さも何倍もあり、手が汗ばんでくるほどの恐怖感を感じました。
三か所を回った後はアメリカメモリアルパークに行き、映像を見たり、展示を見学しました。当事者の体験談が聞けるようになっていて、よりサイパン戦を掘り下げて考えることができました。その日の夜の話し合いでは、戦跡を回ってそれぞれが考えたことや身につけた知識を共有したため、視野が広がり、有意義な時間を過ごすことができました。今後のゼミでは、今回のサイパン合宿で学んだことを忘れず、国際教育の普及のために、出来ることから少しずつ進めていきたいと考えています。